コード進行解説#2 Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ(6451) 重要度:★★★★★


ソプラ
ソプラ

今回は「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」というコード進行についてみていこう!

アルト
アルト

うん!みていこう。







重要度:★★★★ (重要、必ず覚えておきたい!)

数多くの名曲に使用されるコード進行で、作曲家・音楽専門家の間では三大進行の一つに数えられています。音楽プロデューサーの小室哲哉さんが好んで使用されていることから、小室進行という愛称でも親しまれています。





Contents






「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」はどんな音がする?


まずはどんなコード進行なのか聞いてみよう!



聞いてみてどうだった?
感想聞かせて!

そうだね、なんだか全体的に暗い感じがするかな。あとは、前回紹介した「Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」に感じが少し似てるかも。




うんうん!始めのコードが暗い感じがするから、その印象に引っ張られている感じだよね。「Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」とは確かに構成が似ているからそう思うのも分かるよ!




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よし、もう少しじっくり聞いてコード進行の印象を深めよう!

僕たちが抱いた印象に分析を加えたものを下にまとめてみたよ!




構成と展開
安心感・安定感のある“Ⅵ”“Ⅰ”で終始している
「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ」緊張感の高まり“Ⅰ”に着地したときの解決感のバランスがとれている

展開としては、徐々に緊張感が高まり、最後に緊張が解かれるといった印象を受けます。

個々のコード
“Ⅳ” “Ⅴ” “Ⅰ” の3つのコードは音に濁りがなく整った音色をしています。対して、“Ⅵ”どことなく引っかかりを覚えるような音色をしています。

“Ⅰ”と“Ⅵ”を比べると、両者安心感・安定感がある点では類似していますが、やはり“Ⅵ”の方が引っかかる覚えるような、何か含みのあるような音色をしてます。“悲しみ” “暗さ” “陰り” などを連想させる音色でもあります。




あと、全体的にすっきりしない感じがするんだけどなんでだろ。


お!いい着眼点だね。それはあとで詳しくみていこうね。








映像・イメージ


コード進行を覚えたり、使いこなすためには映像やイメージを思い浮かべる想像力が大切だと考えます。 ここでは筆者が思い浮かべた映像・イメージを例として紹介しますが、少しでも参考になれば幸いです。 



音と映像・イメージを結びつけるんだったね!

そうそう。作曲やアドリブ演奏、曲の理解を深めるためにも有効な音楽の想像力が身に付くからね!


音楽には想像力が大切なんだね。



雨の勢いが徐々に強まっていくが、最後には少し晴間が見えてくる天候の様子

“Ⅵ”の物悲しい感じが“天候の崩れ”や“雨”を思わせ、“Ⅳ”“Ⅴ”“雨の勢い”が強まり、“Ⅰ”“晴れ間”が差し、天候が回復したというような場面が想像できました。




大切な人と別れることになり、最後に会えるチャンスに何とか間に合いたくて息を切らせ走っている場面

“別れ”という悲しい場面がコードの展開とともに迫ってくるかのような想像です。



イメージ①


悲しい想い出に支配されそうになるが、最後にはいくらか楽になっている様子

昔の出来事、それも胸をつくような悲しい出来事が思い起こされるが、“Ⅰ”によって心がいくらか楽になっているような様子を想像しました。




イメージを共有できればと思って、「映像①」をもとにしたショートムービーを作ってみたよ!よければ見てみてね。








人によってイメージが色々あると思うけど、大切なことは自分なりのイメージをもつということだね!

そうすれば音楽をもっと楽しめそうだね!




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音楽理論・コード理論からのアプローチ



ここからは音楽理論やコード理論の話をしていくよ!

こういう音の構造だからこういう風に聞こえるんだ」と納得してもらえるよう頑張るよ!



小難しい話が出てくるけど、初心者は始めから一気に理解しようとしなくて大丈夫!僕も徐々に覚えていったよ。



コードの機能について


各コードは、
“Ⅵ”“Ⅰ” : トニック(安心・安定感)
“Ⅳ” : サブドミナント(少しの緊張・不安感)
“Ⅴ” : ドミナント(緊張・不安感)
の機能をそれぞれ有しています。



機能 = 役割 だね!“Ⅵ”と“Ⅰ”のように、音の構成が似ていると役割が同じになる場合もあるよ。




コード機能を「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」の順に当てはめると以下のようになります。



“Ⅵ”と“Ⅰ”がどちらもトニックなのは分かったけど、音の感じは違うよね?

そうだね!簡単に言うと“Ⅵ”は暗いトニック“Ⅰ”は明るいトニックだね。音の響きに違いはあるけど、どちらも安定した音色をしているよ。



“Ⅵ”と“Ⅰ”はコードを構成する3音のうち2音が共通するためコードのキャラクターが類似しています。そのため“Ⅵ”は“Ⅰ”に置き換わって使用されることがあります。代理的に扱われることから“Ⅵ”は代理和音(サブコード)と呼ばれます。

しかし、構成音残りの1音が異なるため音色に違いはあります。それが“Ⅵ”は暗い、“Ⅰ”は明るいと印象付ける要因です。

また、安定感においては“Ⅵ”は“Ⅰ”よりも若干弱くなります。言い換えれば、“Ⅵ”の方がトニックの機能が弱いというわけです。


同じトニックでも音色に差があったり、安定感の度合いが違ったりするんだね!

そうだね!そのニュアンスの違いを利用して“Ⅰ”のところを“Ⅵ”に置き換えたり、1回目と2回目でコードを入れ替えたりして工夫している曲はよくあるよね。


あ!今回の「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」の成り立ちもそうだね!同じことがいえるよ!

そっか、定型の「Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」の始めのコードが置き換わって出来たって考え方だね。



前回の記事(コードの機能について)カデンツの解説をしました。カデンツに沿ってコードを変えていくと様々なコード進行が作れるという話でした。

今回の「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」はまさにカデンツがもとになったコード進行です。

“Ⅵ”が“Ⅰ”の代理和音であることを利用して、カデンツの定型である「Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」の初めのコードを“Ⅰ”から“Ⅵ”に置き換えて出来たのが「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」だという見方が出来ます。

カデンツのいいところは、コードの機能はそのままに音色だけを変化させることが出来るということです

作曲なんかする時に役立ちそうな知識だね!







構成音について(導音と主音)


前回、 「導音」「主音」の話をしたの覚えてるかな?

やば…忘れた!

その顔は忘れてるな…

でも、いい機会だ!おさらいしておこう。「覚えてるよ」「知ってるよ」って方はここは同じ内容だから読み飛ばしてもらって大丈夫だよ!




コード進行や音階を考えるときに、出発点・基準となるのが“ⅰ”という音(ドレミでいうとドの音)です。次にどういう音に展開しようが、最後に“ⅰ”に戻ってくると「フレーズが終わった」という終止感が出るのも特徴です。

こうした性質から“ⅰ”は主音と呼ばれています。多くは楽曲やフレーズの始まりや終わりに用いられます。


“ⅰ”は安定した音色をもっていますが、半音下がることでその安定さが崩れて“ⅶ”という音(ドレミでいうとシ)になります。逆をいえば、“ⅶ”はその不安定さを解消したいがために“ⅰ”へ移行しようとする働きを持っています

こうした性質から“ⅶ”は導音と呼ばれ、“ⅰ”の直前に用いられることが多いです。


音楽は緊張と緩和によって成り立っているのですが、主音と導音はそれを成す代表格という訳です。


今回のコード進行の中では、主音と導音は“Ⅴ→Ⅰ”の部分に含まれています

“V”を構成する音は“v・・ⅱ”です。
(ドレミでいうと、ソレ)

“Ⅰ”を構成する音は“・ⅲ・ⅴ”です。
(ドレミ でいうと、 レミ)


“Ⅴ→Ⅰ”で印象を受けるすっきりとした感じはこの主音と導音の働きによるものだったという訳です。






構成音について(共通音と半音進行)


次は、始めの方で話していた「“Ⅵ”の音の印象を引きずってしまう」っていう理由を掘り下げていくよ!

あぁ、なんだか全体的に暗く感じるってやつね。


そうそう!それには「Ⅵ→Ⅳ」の部分が多少関わってきていると思うんだ。



ここで注目したいのが、「Ⅵ→Ⅳ」における構成音と音の変化です。


“Ⅵ”を構成する音は“ⅵ・ⅰ・ⅲ”です。(ドレミならラドミ)

“Ⅳ”を構成する音は“ⅳ・ⅵ・ⅰ”です。(ドレミならファラド)


両コードの構成音を見比べると“ⅵ・ⅰ”の音が共通していることが分かります。(ドレミでいうと、ラドの音)


共通する音があればある程、コードの機能や音色が似通ったり、コード間の親和性が高まったりします

“Ⅵ→Ⅳ”においては、コードの機能は違えどコード間の親和性があるように聞こえるかと思います。
つまり、音色が似ている・音の相性が良いコードたちだということです。



ん?共通音が多いとコードの機能が同じになるんじゃなかったっけ?トニックの“Ⅰ”と“Ⅵ”みたいに

よく気づいたね!この場合は違うんだよ。これには共通外の音である“ⅲ”と“ⅳ”に理由があるんだ。



“Ⅵ”と“Ⅳ”のコード機能の違いを知るために、共通外の音である“ⅲ”と“ⅳ”(ドレミでいうと、ミとファ)に焦点を絞ってみましょう。

“ⅳ”という音は前項で触れた導音と似た性質があり、半音下の“ⅲ”に移行しようとする働きがあります。これがために“ⅳ”を構成音にもつ“Ⅳ”というコードは不安定要素を含んでいて、“ⅲ”を構成音にもつ“Ⅵ”や“Ⅰ”に移行することで解決感や安心感を得ようとするのです。

つまり、“ⅳ”を構成音にもつ“Ⅳ” は不安定さを生む機能“ⅲ”を構成音にもつ“Ⅵ” はそれを解消する機能があるということです。


今回のコード進行では「Ⅵ→Ⅳ」の順になっているので、安定→不安定という印象を与えます。

構成音も当然「ⅲ→ⅳ」の順になっていますが、ここでは解決感・安心感を得ようとする “ⅳ→ⅲ”とは逆の動きをしようと・音の性質に反抗しようとするのでそれだけ強い音の力が生まれています。

半音の音の移行はこのように強い音の力をもっていて、半音進行と呼ばれています。前項で紹介した導音と主音も同じく半音進行で力強い音の変化があります。


ここまでをいったんまとめるよ!



「Ⅵ→Ⅳ」においては2つポイントがあります。
コード間の親和性が高い(音色が似ている、音の相性が良い)

“ⅲ→ⅳ” が半音進行になっているため力強い音の変化がある



ここからが「“Ⅵ”の音の印象を引きずってしまう」理由について。


「“Ⅵ”の音の印象を引きずってしまう」理由についてです。
※ここからは筆者の考察を多分に含みます。


まず、コード間の親和性が高いため、“Ⅵ”の音色が“Ⅳ”へ影響を多少及ぼしていると考えられます

コード単体で聞くときとコード進行の中で続けて聞くときでは音の印象が異なる場合がありますが、「Ⅵ→Ⅳ」はまさにそうだといえます。本来メジャーコードであるはずの“Ⅳ”がマイナーコードの音色に雰囲気が寄って聞こえてくるような感触があります。

それは構成音が似たコード同士が並ぶことで音色も共鳴するかのように似通って聞こえてくるのが原因だと思われます。



次に、「ⅲ→ⅳ」の半音進行により不安定さが生まれる点についてですが、この不安定さや音の緊張感が“Ⅳ”にさらに付加されることになります

そのため、マイナーコードからメジャーコードに移った感触よりも、不安定さや緊張感が高まった印象の方が優位にあるように思えます。

次項でも解説しますが、続く“Ⅴ”はより不安定で緊張感のあるコードなので、“Ⅵ”の醸し出すマイナーの雰囲気が打ち消されないままコードが展開されています。


つまり、“Ⅳ”は“Ⅵ”からマイナーの音色を引き継ぎながらも音の緊張感を高めているため、メジャーコードに切り替わった感触が薄まり「“Ⅵ”の音の印象を引きずる」原因となっているのです。

話がややこしくてちょっと疲れちゃったなぁ。

理論書には載っていないような話だから、考察がいっぱい入って理屈っぽい話になっちゃったね。ごめんよ!仕切り直して次にいってみよう!







メジャーとマイナーについて



メジャーとマイナー?そういえばさっきからそんな話がちらほらと出てるね。

そうそう!実は前項での話がここでも関わってくるんだけど、これからの話はそんなにややこしくないから安心して!


コード進行や楽曲には音階(スケール)というものがあります。簡単に紹介すると、 音階(スケール)はコード進行や楽曲全体のキャラクターを決める音の並びのことです。

大きく分けて、明るい印象のメジャースケールと暗い印象のマイナースケールの2つあります。

しかし、メジャースケールとマイナースケールは表裏一体の関係にあり、ポップスではメジャーとマイナーの境界があいまいな楽曲が多数存在します。

ですから、このブログではメジャースケールとマイナースケールをあえて区別せずにメジャースケール準拠でコード進行を表記しています。

なぜこういった話をするかというと、「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」の進行においてもメジャーとマイナーのあいまいさが微量あるからです。


分かりやすくCメジャーを基に解説します。

Cメジャーになると「Am→F→G→C」というコード進行の表記になります。“F” “G” “C”はメジャーコードで“Am”はマイナーコードです。

「Am→F→G→C」は、メジャーコードである“F” “G” “C”を中心に展開しており、何より“C”に終着するのでメジャーの感じが全面に出ると一見思われます。(メジャーは一般的に明るさ、華やかさや音が整った感じなどの印象を与えます)

しかし、実際聞いてみるとメジャーの感じはそう強くはないように思えます。


確かに!僕はむしろ何だか暗い印象を受けたよ。



それは先頭の“Am”というマイナーコードが影響しており、「Am→F→G」にかけてマイナーの感じとそこに付随した緊張感の膨らみがメジャーの感じを抑えている印象があります

前項でふれた“Ⅵ”と“Ⅳ”の類似性・親和性もここに関係しており、“Am”のマイナーの感じが“F”においても音の余韻として多少引き継がれているのです。

“Am”のマイナーの感じが余韻を残し、「F→G」が緊張感を膨らませているのでメジャーの感じが薄れているのです。


ポイントは“Am”が全体の雰囲気を掌握している、言い換えればAm基準のコード進行に聞こえるという点です。

もちろん聞こえ方には個人差がありますし、このコード進行にどういったメロディーを乗せるかによっても音の印象に差(メジャースケールに聞こえるなど)が生まれます。

実際、コード進行を一部見ただけではメジャーかマイナーかを判別するのは難しいのですが、「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」の進行に関してはマイナーの雰囲気が出てるように思います

そのため“Ⅰ”に着地した際の終止感は若干弱まり、再度“Ⅵ”に戻り同じ進行を繰り返しても音の流れがスムーズに聞こえます


ここまで回りくどい解説をしちゃったけど、要は「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」はマイナースケールを基にしたコード進行みたいだねって話なんだよ。

それじゃ、感覚的に「全体的に暗い感じがする」って言ってたのは当たってたんだね!



そうだね!その感覚の裏付けをとるために理論からアプローチをしたんだ。

僕って音楽のセンスあるかも!

聞いてないや…





「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」が使用されている楽曲


最後に「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」が使用されている楽曲を紹介するよ!

随時、リストを更新していくね!あと、音源を準備しているから更新を待っててね。


  • 『Get Wild』(1987年)/TM NETWORK
  • 『大迷惑』(1989年)/ユニコーン
  • 『survival dAnce』(1994年)/TRF
  • 『栄光の架橋』(2004年)/ゆず
  • 『3月9日』(2005年)/レミオロメン
  • 『愛唄』(2007年)/GReeeeN
  • 『千本桜』(2011年)/初音ミク(黒うさP)
  • 『フライングゲット』(2012年)/AKB48
  • 『白日』(2019年)/King Gnu
  • 『馬と鹿』(2019年)/米津玄師


※2021年10月12日現在、音源を準備中です。






最後まで見てくれてどうもありがとう!

よければ他のコード進行の記事も見ていってね!

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