コード進行解説#3 Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ(4536) 重要度:★★★★★


ソプラ
ソプラ

今回は「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ」というコード進行についてみていこう!

アルト
アルト

「4536進行」と言えば有名なやつだね!







重要度:★★★★ (重要、必ず覚えておきたい!)

数多くの楽曲に使用されるコード進行で、作曲家・音楽専門家の間では三大進行の一つに数えられています。通称「4536進行」です。「Ⅳ△7→Ⅴ7→Ⅲm7→Ⅵ」というのも定番の型の一つです。





Contents






「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ」はどんな音がする?


まずはどんなコード進行なのか聞いてみよう!



聞いてみてどうだった?
感想聞かせて!

胸がキュンってくる感じがする!あと、ちょっぴり切ないね。




分かるわかる!特に日本人受けの良さそうなエモーショナルな感じがするよね。




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よし、もう少しじっくり聞いてコード進行の印象を深めよう!

僕たちが抱いた印象に分析を加えたものを下にまとめてみたよ!




構成と展開
前半「Ⅳ→Ⅴ」で胸に迫るような緊張感・高揚感が高まっている
後半「Ⅲ→Ⅵ」で➀の緊張感などが緩やかにほころぶ

前半の緊張感などの高まりはダイナミックな感じがしますが、後半は緊張感が緩やかにほころぶとともに何か心に引っ掛かりを覚えるような、切なさや陰りを感じるような音色をしています。その組み合わせがドラマティックに思えるコード進行です。

個々のコード
“Ⅳ” “Ⅴ” の2つのコードは音に濁りがなく整った音色をしています。また、“Ⅳ” はやや緊張感が高く“Ⅴ” はそれ以上に緊張感が高い音色をしています

対して、“Ⅲ”“Ⅵ”は引っ掛かりを覚えるような音色をしています。暗さ、重たさ、切なさなどそういった印象を受けます。

Ⅵ”は終止感がそれほど強くないけれど、落ち着いた音色です。“Ⅲ”は“Ⅴ”の緊張感を受け継ぎ、落ち着いた音色の“Ⅵ”へとつなぐクッションのような働きがあるように感じます。




ちなみに、音をさらに付け加えて「Ⅳ△7→Ⅴ7→Ⅲm7→Ⅵ」というのも4536進行の定番の型として知られるよ!(Cメジャーなら「FM7→G7→Em7→Am」だね)


うわ~!これだけで名曲の予感がするよ!

そうだね!事実たくさんの名曲にこの進行が使われているよ!実は、多くの曲に使用されるだけの理由があるんだけど、今回は4536進行の基本形をもとに音のイメージや理論からアプローチして追究していこう!








映像・イメージ


コード進行を覚えたり、使いこなすためには映像やイメージを思い浮かべる想像力が大切だと考えます。 ここでは筆者が思い浮かべた映像・イメージを例として紹介しますが、少しでも参考になれば幸いです。 



ここではコード進行から映像やイメージを連想させるよ!

具体的なイメージを持つことでこのコード進行のキャラクターをより深く理解するきっかけになるよ!作曲したり歌や演奏する際にも役立つね。


読者の方も是非一緒にイメージ練習してみてね!



別れの瞬間が刻々と迫ってきて、笑顔で送り出そうとするが寂しさが最後までぬぐいきれず涙する場面

「Ⅳ→Ⅴ」の緊迫感の高まった雰囲気が今まさに別れが訪れようとしている場面を思わせ、「Ⅲ→Ⅵ」切なさを引きずりながらも心の状態を落ち着かせようとしているようなそんな感触がありました。




走り出したけど、涙ながらその先に進むのは諦めようとする場面

勢いのある「Ⅳ→Ⅴ」から徐々に緩やかに収束する感じから連想しました。“Ⅵ”では終止感が強くないので、まだその先もあるような・先に進むのを諦めきれないようなそんなもどかしさもあります。



イメージ①


悲しい想い出が蘇るが、暗い気持ちは払拭しようとしている様子

悲しい思い出が一気に湧き上がってくるけれど、気持ちに整理をつけて徐々に落ち着こうとしているようなイメージです。




イメージを共有できればと思って、「映像①」をもとにしたショートムービーを作ってみたよ!よければ見てみてね。








人によってイメージが色々あると思うけど、大切なことは自分なりのイメージをもつということだね!

イメージが湧かないって人はこの進行を実際つかっている楽曲をどんどん聴いて、どんな歌やメロディーがあてられているか見てみるといいよ!作曲者のイメージが垣間見えて参考になると思う。




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音楽理論・コード理論からのアプローチ



ここからは音楽理論やコード理論の話をしていくよ!

こういう音の構造だからこういう風に聞こえるんだ」と納得してもらえるよう頑張るよ!



小難しい話が出てくるけど、初心者は始めから一気に理解しようとしなくて大丈夫!僕も徐々に覚えていったよ。



コードの機能について


「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ」の中で各コードは、
“Ⅵ” : トニック(安心・安定感)
“Ⅳ” : サブドミナント(少しの緊張・不安感)
“Ⅴ”“Ⅲ” : ドミナント(緊張・不安感)
の機能をそれぞれ有しています。



機能 = 役割 だね!“Ⅲ”は使いどころによってトニックにもなったりするコードだよ!今回はドミナントだね。




コード機能を「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ」の順に当てはめると以下のようになります。



今回はサブドミナントとドミナントの割合が多めだね。

そうだね!サブドミナントとドミナントの機能が十分に働いているから、4536進行は心に迫るような緊張感・緊迫感を感じるんだ!



コード進行においてはどこに緊張感を置き、どこでその緊張を解くかが一つポイントです。「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ」では先に緊張感を置き、最後の“Ⅵ”で緊張感を解いています。途中の“Ⅲ”は緊張感を引き延ばすかのような役割を持っていて、緊張感がすぐには解決しないもどかしさを演出しています


そういえば、前項までで“Ⅵ”は「終止感が強くない」とか「もどかしい」とか言ってたけど、“Ⅵ”はトニックで落ち着いた感じがあるはずなのにどうしてかな。

いい着眼点だね!次の項から順追ってその理由を探っていこう。








メジャーとマイナーについて



メジャーとマイナー?そういえばそんな話「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」でも解説してたよね?

すごい!よく覚えてたね!
そうなんだ、全体的にマイナースケールに聞こえるよねって話だったんだけど、実は今回も同じようなことがいえるんだ!




コード進行や楽曲には音階(スケール)というものがあります。簡単に紹介すると、 音階(スケール)はコード進行や楽曲全体のキャラクターを決める音の並びのことです。

大きく分けて、明るい印象のメジャースケールと暗い印象のマイナースケールの2つあります。

しかし、メジャースケールとマイナースケールは表裏一体の関係にあり、ポップスではメジャーとマイナーの境界があいまいな楽曲が多数存在します。

ですから、このブログではメジャースケールとマイナースケールをあえて区別せずにメジャースケール準拠でコード進行を表記しています。



話を「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ」に戻します。実は、「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ」進行においてもメジャーとマイナーのあいまいさが感じられます


分かりやすくCメジャーを基に解説します。

Cメジャーになると「F→G→Em→Am」というコード進行の表記になります。“F” “G”はメジャーコードで“Em”“Am”はマイナーコードです。

Cメジャーを基にしたコード進行と言いつつも、コード進行の表記だけ見ると“Am”に終着しているので、“Am”を軸としたAマイナースケールと解釈したくなります。


“C”のコードも出てこないし、Aマイナースケールってことでいいんじゃないかな?

確かに!気持ちは分かるよ。でも、そう判断するのは理論的には不十分なんだ。



Aマイナースケールと断定しきれないのにはいくつか理由があり、詳細は解説すると長くなりすぎるので割愛しますが、➀Aマイナースケールを軸とした際の導音がない②前後にどんなコード進行を置くかによっても解釈が変わる③メロディーとの組み合わせによっても解釈が変わる等の理由が挙げられます。

➀の導音に関しての話ですが、Aマイナースケールにおける導音は“ソ♯”なので、もし「Em→Am」の箇所が「E→Am」となっていればAマイナースケールだと推測できます。(Em:ミ・ソ・シ、E:ミ・ソ♯・シ)

導音については「Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」の記事で詳しく解説しているか是非併せてみてみてね!



➀~③の理由により「F→G→Em→Am」がAマイナースケールを軸としているとは言い切れないのです。

しかし、Cメジャーである前提に立ち返ってみても、最後が“C”でなく“Am”で終止しているので、このコード進行だけをみて判断するならばCメジャースケールの感じが若干薄いです。


そうなると考え得る解釈は2つです。一つは、導音のないAマイナースケール(Aナチュラルマイナースケールといいます)である。もう一つは、完全な終止感を避けて代理和音“Am”を使用したCメジャースケールである。

代理和音については「Ⅵ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ」の記事で詳しく解説しているよ。“Ⅰ”と同じコードの機能をもつ“Ⅵ”は“Ⅰ”に置き換わって使用されることが多いよ!



このようにメジャーなのかマイナーなのかはっきりとしないのが「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ」というコード進行です。しかし、そのはっきりしないもどかしい感じがこのコード進行の味わいでもあります。

また、“Ⅵ”の終止感が強くないという問題についてですが、これはどちらのスケールであっても音の構造上説明がつきます。

マイナースケールだとすると、導音がないため、導音→主音に起こる強い解決感がなく終止感も弱まります。一方、メジャースケールだとすると、“Ⅰ”よりも安定感・解決感の弱い代理和音“Ⅵ”を使用しているので終止感が弱まります


それでは、なぜ終止感を弱くしているのでしょうか。その理由は次の項でみていきましょう!





三大進行である理由


三大進行って知ってるかな?

ん…名前は聞いたことあるかも。

ポップスでよく用いられる有名なコード進行で、今回の「4536進行」と「小室進行」「カノン進行」の3つの総称だよ!

ここでは「4536進行」を例になぜ三大進行と呼ばれ重宝されるのかその理由について追究していくよ!


三大進行と呼ばれるものにはいくつか共通する特徴があります。

➀感動させる・心を揺さぶる音の展開になっている
②切なさを感じさせる
③ループ性が高い


大きく3つに分けましたので、「4536進行」を例にそれぞれ詳しくみていきましょう。



感動させる・心を揺さぶる音の展開になっている
音楽で人を感動させるには緊張感(サブドミナント・ドミナント)と解決感・安心感(トニック)の配置とバランスが非常に重要です。三大進行はどれもその配置とバランスが絶妙になっています。

「4536進行」では緊張感の高まりをはじめに配置し、それを後半で緩やかに解決させていました。全体としては緊張感の比重を高くおき、聴き手の注意をひきつけるなど構造や展開が洗練されています。


②切なさを感じさせる

日本人は特に「切なさ」を好みます。「切なさ」はドミナントやマイナーコードによってなどによって演出されますが、三大進行はもれなくその演出が綺麗にはまっています。それゆえ三大進行はあらゆる楽曲で多用されます。

「4336進行」は「Ⅳ→Ⅴ」のサブドミナントからドミナントにかけて高まる緊張感とそれを引き継ぐ“Ⅲ”と“Ⅵ”のマイナーコードが切ない印象を与えます。


③ループ性が高い
ループ性とは、同じコードを繰り返しできるかの度合いのことです。ループ性が高いと同じコード進行を繰り返しても心地良く感じることが出来ます。三大進行は音の構造上ループ性が高いです。三大進行を使用した楽曲をよくよく聴いていただくと、一定箇所あるいは曲を通してその進行が繰り返されていることが分かります。


前項で「4536進行」が終止感が弱い理由について問いかけていましたが、その理由はループ性を高めるためです。強い終止感や解決感があるとそこで音の流れが一度止まってしまいますが、それらを取り除くと音の流れがスムーズになります。その結果、ループ性が高まりループさせても心地よく感じることが出来るのです。

これだけいいところが詰まってるんだから、そりゃ多くの人が三大進行を使いたくなるよね!







“Ⅲ”というコード


最後に取り扱い注意の“Ⅲ”というコードについて知ってほしいことを解説するよ!

取り扱い注意!?“Ⅲ”が?


そうそう!先にも触れたけど、“Ⅲ”は使いどころによってトニックになったりドミナントになったりするんだ。だから、取り扱いには要注意!



コードには機能(役割)があってそれぞれトニック、サブドミナント、ドミナントと分類することができます。トニックの代表格は“Ⅰ”、サブドミナントの代表格は“Ⅳ”、ドミナントの代表格は“Ⅴ”です。この各機能を代表するコードを主要三和音と呼びます。主要三和音はコード機能の働きが最も大きいコードです。

一方、残りの“Ⅱ”“Ⅲ”“Ⅵ”“Ⅶ”のコードは音の構造が類似する主要三和音と同じコード機能を持ちます。例えば、“Ⅵ”は構成音が“ⅵ・”で主要三和音“Ⅰ”の構成音“・ⅴ”と共通する音が似通っており、“ⅰ”という主音を共通してもっているのでトニックに分類されます。

このように他も分類すると以下のようになります。



音の類似性から主要三和音に置き換わり代理的に使われる “Ⅱ”“Ⅲ”“Ⅵ”“Ⅶ”のコードを代理和音と呼びます。

ここまでで主要三和音?代理和音?主音?ってなった人はこちらの記事の「コードの機能」と「導音と主音」って箇所を読んでみてね!



“Ⅲ”がなぜトニックにもドミナントにも分類されているかというと、“Ⅲ”の構成音は“ⅲ・ⅴ・ⅶ”でトニックの“Ⅰ”の構成音“ⅰ・”にもドミナントの“Ⅴ”構成音“・ⅱ”にも類似しているのが理由の一つとしてまず挙げられます。

トニックとして分類されるケースとしては、同じトニックの機能をもつ“Ⅰ”や“Ⅵ”の直後に配置されているときや、“ⅳ”を構成音にもつサブドミナントの“Ⅳ”や“Ⅱ”の後に回ってきて「ⅳ→ⅲ」という強い解決感のある半音進行が発生したときなどです。

ドミナントとして分類されるケースとしては、今回のように“Ⅵ”の直前に配置されているときです。


なぜ、“Ⅵ”の前にくるとドミナントの機能をもつか、またここでCメジャーとAマイナースケールを例に出して解説します。

Cメジャーではこれまでみてきた通り、“Ⅰ”の“C”がトニック“Ⅴ”の“G”がドミナントの機能をもっていました。これは“C”には“ド”という主音が、“G”には“シ”という導音が含まれており、さらに「ソ→ド」という完全5度下の音の移行が強進行と呼ばれる強い音の結びつきを感じさせる効果をもっているからです。

実は、Aマイナーにおいても同様の組み合わせがあります。。Aマイナーでは、“Ⅰ”のトニックにあたるのが“Am”“Ⅴ”のドミナントにあたるのが“Em”もしくは“E”です。主音は“Am”に含まれる“ラ”で、導音は“E”に含まれる“ソ♯”です。(なぜ唐突に“E”や“ソ♯”が出てくるのかについて、これを理解するにはマイナースケールについて知っておく必要がありますがここでは詳細を割愛します。)

導音である“ソ♯”を含む“E”の方がドミナントの機能が強く、導音を含まない“Em”はそれよりかドミナントの機能は弱いです。導音を含まないのになぜドミナント機能を有するか、それは強進行になっているからです。

強進行はベース音(一番下の音)で判断するので「E→Am」も「Em→Am」もともに完全5度下の移行なのでこれに当てはまります。


つまり、今回のコード進行の「Em→Am」もCメジャーの「G→C」のときと同じくドミナント→トニックの関係になっているという訳です。しかし、導音→主音の展開を含まないので解決感は弱くなっています


さらに付け加えると、今回は「Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ」のならびになっていて、“Ⅴ”と“Ⅲ”の類似性により“Ⅲ”は“Ⅴ”の音色を引き継いでいるかのように聞こえるので、“Ⅲ”のドミナントとしての機能がより増しています

話が難しい…。

話が込み入っちゃったね。とりあえず、押さえてほしいポイントは➀“Ⅲ”はトニックにもドミナントにもなりうること ②「Ⅲ→Ⅵ」のならびだと“Ⅲ”はドミナントに聞こえる ってことかな。







「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ」が使用されている楽曲


最後に「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲ→Ⅵ」が使用されている楽曲を紹介するよ!

随時、リストを更新していくね!あと、音源を準備しているから更新を待っててね。


  • 『Can’t take my eyes of you』(1982年)/Frankie Valli
  • 『ロビンソン』(1995年)/スピッツ
  • 『LOVEマシーン』(2000年)/モーニング娘。
  • 『瞳を閉じて』(2004年)/平井堅
  • 『ハネウマライダー』(2006年)/ポルノグラフィティー
  • 『夜に駆ける』(2019年)/YOASOBI


※2021年10月15日現在、音源を準備中です。






最後まで見てくれてどうもありがとう!

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