今回は有名なコード進行「Ⅰ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ」についてみていこう!
お願いします!
基本形はコチラ
上記の派生したかたちであり、実践的なコード進行はコチラ(今回はコチラをメインに取り扱います)
重要度:★★★★★ (重要、必ず覚えておきたい!)
数多くの名曲に使用されるコード進行で、作曲家・音楽専門家の間では三大進行の一つに数えられています。パッヘルベルのカノンに使用されていることから、カノン進行という愛称でも親しまれています。
Contents
カノン進行の構成と音の印象
まずはどんなコード進行なのか聞いてみよう!
なんか聞いたことがあるようなコード進行だね。
そうだね!結構色んな曲に用いられているコード進行だからね!
じゃあ、これはどうかな??
んー、さっきとあんまり違いが分かりにくいけど、こっちの方がしっくりくる気がするな。
そう!これはさっきと音の配置を少し変えたバージョンなんだけど、こっちの方がカノン進行の魅力を語る上で大事な要素を含んでいるんだよね。しっくりきたというのもいい着眼点だね!
理由は後の項で説明するけど、今回はこっちのバージョンの方をメインに解説していくね!
よし、理論的な話はあとでするとして、まずはこの進行がどういう構造になっているかをまとめてみよう!
うん!よろしく!
構成と展開
①長いコード進行ですが、まとまり感がある構成になっています。前半は音が下行していき、後半は上行していきまた初めのコードに戻るという構成です。
②緊張感と安心感(緊張が解けた感じ)が交互におとずれます。最後の2つのコードは緊張感が続くため、初めのコードに戻ったとき(繰り返したとき)にほっとするような安心感をもたらします。
③真ん中辺りに挿入されているコード(ⅥやⅢonⅴ)が他のコードと比べ複雑なサウンドをしている(マイナーコードである)ので、それがいいアクセント・スパイスになっています。
個々のコード
Ⅰ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵの5つのコードが使用されています。オンコード(詳しくは後で)というかたちではありますが、コードの主だったキャラクター(音色)は変わりません。
安心感を抱くようなⅠ・Ⅵのコード、緊張感をもたらせるⅣ・Ⅴのコード、その中間でコード進行の潤滑油の働きをするⅢのコードがいい配分・いい配置で使用されており、メリハリのあるコード進行になっています。途中、ⅥとⅢが挿入されていますが、この2つはマイナーコードと呼ばれ、一般的には「暗い」「悲しい」という印象を持たれるコードです。マイナーコードが挿入されていることで、サウンド面で変化を感じ単調に感じさせません。
なんだか、話が複雑…
そうだね。
カノン進行は分析していくと色んな大切な音楽要素に出くわすから、文章に起こすと複雑に思えてくるね。
次から音楽理論にふみこんだ内容を取り扱うけど、もし、内容が「難しい!」と感じたなら、も少しシンプルなコード進行例えば「Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ(1451)」の記事から慣れていってもらえると嬉しいな!
音楽理論・コード理論からのアプローチ
ここからは音楽理論やコード理論の話をしていくよ!
「こういう音の構造だからこういう風に聞こえるんだ」と納得してもらえるよう頑張るよ!
小難しい話が出てくるけど、理論の初心者は始めから一気に理解しようとしなくて大丈夫!
コードの機能について
各コードは、
①Ⅰ、Ⅵ : トニック(安心・安定感)
②Ⅳ: サブドミナント(少しの緊張・不安感)
③Ⅴ : ドミナント(緊張・不安感)
の機能をそれぞれ有しています。
Ⅲに関しては特殊で、前後のコード進行によって機能が変わります。今回のカノン進行では解釈が分かれそうなので明言は避けますが、音の印象的には、直前のⅥのトニックの感じを受け継ぎつつ次のⅣというサブドミナントへ移行しようとする予感を感じさせます。
機能 = 役割 だね!音のキャラクターと捉えてもいいかな。
コード機能をカノン進行に当てはめると以下のようになります。
Ⅰ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅲ
→Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ
トニック→ドミナント→トニック→トニック寄り
→サブドミナント→トニック→サブドミナント→ドミナント
あ、「on~」とか「/」とかは省略したんだね!
オンコードのことだね!見にくかったからね。
まずは細かい話は抜きにしてコード進行全体の流れについてみていこう!
コード進行ではコードの配置というものが大切になってきます。コードの機能(役割・キャラクター)が異なるコードをどういう配置にするかがポイントです。カノン進行は一見長いコード進行のように思いますが、機能が異なるコードをうまく配置しているため間延びした印象を受けないのが特徴です。
安心感→緊張感→安心感みたいに交互にくるから聞きやすいコード進行だよね!
そうだね!あと最後のⅣ→Ⅴ部分が物語のクライマックスみたいに緊張感が続く部分でいい演出になっているよね!
また、ⅠとⅥはコードの機能はどちらもトニックですが、少し聞こえ方が異なります。その辺りの話はコードの展開を踏まえて次項で詳しくみていきましょう。
コード理論 (コードの展開について)
コードの展開を詳しくみていくのに、カノン進行を前半パートと後半パートに分けてみます。前半パート:Ⅰ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅲ、後半パート:Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴです。
まずは前半パート:Ⅰ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅲから!
Ⅰ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅲは、Ⅰという安定感のあるトニックから緊張感のあるⅤに繋ぎ、Ⅵでその緊張が解かれたあとⅢから後半パートへと続く展開になっています。
Ⅴというのは本来、Ⅰへ戻る力が強いコードです。緊張感のあるサウンドがⅠへ戻ることで緊張が解かれた感じを思わせるのです。ⅥもⅠと同じトニックのコードですが、Ⅰに比べると安心感・安定感が若干弱まります。ですから、Ⅴ→Ⅰに比べると、Ⅴ→Ⅵは同様に安心感・安定感が若干弱まって聞こえるのです。それはその後も展開が続いていくと思わせる効果もあります。
Ⅲは前後のコードによりトニックとドミナントどちらかの機能を持ちますが、どちらにせよⅠやⅤなどに比べると機能は弱いです。ここではどちらかというとトニック寄りで、その役割は前半パートと後半パートをつなげることにあります。
また、機能以外のサウンド面の話ですが、ⅥとⅢはマイナーコード(CメジャーでいうとAmとEm)にあたるので、ⅠやⅤのメジャーコードとは少し聞こえ方が異なります。マイナーコードはメジャーコードに比べると少し複雑なサウンドをしているのです。よくメジャーコードは「明るい」「陽気」と、マイナーコードは「暗い」「悲しい」といった印象を与えると言われますね。
Ⅰ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅲの並びでは、冒頭Ⅰ→Ⅴがメジャーコードでその後にⅥ→Ⅲのマイナーコードが続いています。メジャーコードからマイナーコードに移行することでサウンドに変化が生まれます。分かりやすくいえば「明るい」から「暗い」といった変化です。こうした変化があることでコードの展開が単調にならずに済んでいるという特徴もあるのです。
次は後半パート:Ⅳ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴだよ!
続いてⅣ→Ⅰ→Ⅳ→Ⅴは、Ⅳ→Ⅰの連結で緩やかな緊張の緩和が起こり、またⅣが続き、その後は再度Ⅰがくると予感させておきながら緊張感の高いⅤが現れる展開になっています。期待を裏切り、Ⅳ→Ⅴと緊張感が高まる展開は面白いですね。最後のⅤは緊張感の高いコードで、安定感・安心感のあるⅠへ移行しようとする作用が強いです。ですから、冒頭のⅠへ戻ることで緊張感が解かれたような、すっきり解決したような感じをもたらします。(ちなみに、Ⅴでフレーズが終わるかたちを半終止と呼びます。詳しくは関連記事をご覧ください!)
Ⅳ→Ⅰの部分についてです。本来Ⅰは絶対的な安定感・安心感があるコードですが、オンコードのⅠonⅲ(CメジャーでいうとC/E)になることでほんの若干安定感・安心感が崩れます。それは次の展開を予感させる効果もあります。この辺りのオンコードの話は次の項で詳しく見ていきましょう!
オンコードについて
おまたせ!ここからオンコードについてもふれていくよ!
「on~」とか「/」とかの部分の話だよね。
コードにはオンコードという状態があります。通常、コードはベース音(最低音)の上に音が重なって構成されているのですが、どの音がベース音になるかはコードの基本形では決まっています。例えば、CというコードではC(ド)の音、DmというコードではD(レ)の音といった具合にコード名のアルファベット部分に該当する音がそのコードのベース音になるのが基本です。このベース音を他の音に変える場合は基本形と区別してオンコードと呼びます。
表し方は大きく2種類あって、「on」を使う方法と「/」を使う方法があります。(この記事ではローマ数字表記は「on」を、アルファベット表記では「/」を使用しています。)
「Ⅰonⅲ」と表記した場合、コードはⅠでベース音はⅲ(3度)の音。
「C/E」と表記した場合、コードはCでベース音はE(ミ)の音。
とりあえず、「on」や「/」の左側にあるのが本来のコードで、右側に書いてあるのがベースの音ってことだけ分かればこの後の話もOK!
では、カノン進行に話を戻しましょう。カノン進行を実践的なかたちで表すと画像のようなコード進行にあります。
オンコードというかたちになっている箇所がありますね。オンコードとはベース音が基本形とは異なる話でしたから、ここではベース音に注目してみましょう。
ベース音だけを取り出してみます。分かりやすくドレミ表記にしますね。そうすると、冒頭より順に「ド→シ→ラ→ソ→ファ→ミ→ファ→ソ」となります。楽譜に表すと以下のようになるのですが、注目してもらいたいのは(楽譜の一番下)、途中までは順番に音が下がっていって、最後3音で音が順に上がっているという点です。前半は下行、後半は上行という2つの大きなムーブメントが起きていますね。
(※こちらの音源はベース音のみ)
コードは短いスパンでサウンドが変化しているので、ベース音のこうした大きいなムーブメントはコード進行全体を下から支える役割を果たしています。
他にも着目したいポイントが2つあります。1つ目は、前項でも触れたⅣ→Ⅰonⅲの部分です。本来、Ⅰのベース音はⅰ(Cメジャーだとドの音)であり、Ⅰというコードにおいても楽曲やスケールにおいても絶対的基準となる音です。ⅰの音がⅠというコードのベース音にあることで絶対的安心感・安定感が生まれるのですが、これがⅲの音(Cメジャーだとミの音)に変わるとその感じがほんの少し弱まります。Ⅳ→Ⅰの流れだとⅠでしっかり着地したような感じがあるのですが、Ⅳ→Ⅰonⅲだとその後も続きそうな予感がほんの若干あるのです。実際、Ⅳ→Ⅴと続いていくわけですから展開としてスムーズな印象を受けます。
もう1つが、最後の3つのコードの流れ(Ⅰonⅲ→Ⅳ→Ⅴ)についてです。コードの機能でいうと、トニック→サブドミナント→ドミナントという緊張感が高まってくる箇所ですね。ベース音はというと、Ⅰonⅲのコードの箇所でⅲの音まで下行しきった後、そこからⅲ→ⅳ→ⅴ(Cメジャーだとミ→ファ→ソ)と上行していますね。コードの機能がもたらす緊張感の高まりとベース音の上行が相まって、ここは高揚感を感じさせます。カノン進行がエモーショナルなのは、それまでのサウンドや展開のおかげでもありますが、最後のこういった作用が効いているからですね!
オンコードのようにベース音を変えるのは、音の流れをスムーズにしたり、コード進行の流れを下支えする効果があるからなんだね!
カノン進行が使用されている楽曲
最後にカノン進行が使用されている楽曲を紹介するよ!
随時、リストを更新していくね!あと、音源を準備しているから更新を待っててね。
※カノン進行は数えきれないほどの楽曲で使用されています。(一部のコードを変化させた・応用した形などもあります。)こちらではごくごく一部を掲載します。
- 『カノン』/パッヘルベル
- 『Don’t Look Back In Anger』(1995年)/Oasis
- 『Pretender』(2019年)/TRF
- 『さくら(独唱)』(2003年)/森山直太朗
- 『恋するフォーチュンクッキー 』(2014年)/AKB48
※現在、音源を準備中です。
最後まで見てくれてどうもありがとう!
よければ他のコード進行の記事も見ていってね!
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