『和声 理論と実習(音楽之友社)』の“ちょっと分かりづらい”箇所を深堀りする記事です。
本日の深堀りは、「Ⅱ→Ⅴの連結」について。
“ちょっと分かりづらい”のは以下の引用箇所。
Ⅱ→Ⅴの連結においては、両和音の間に共通音ⅱがふくまれるが、これを保留せずにもっとも近い音(ⅶ)に下行させ、かつ、両和音の配分を一致させる。
第3章 基本位置3和音の連結 P34より
セオリー
3和音の連結において、共通音が含まれる場合、その音を保留するのが標準です。しかし、「Ⅱ→Ⅴの連結」においては、共通音ⅱがあるにも関わらず、これを保留しません!なぜでしょう…。
連結:2個の和音を相次いで連ねること(和音と和音を連ねること)。
保留:2音の音の高さが同じこと、2音の音の高さを同じにすること。
あえて保留(パターン①)
保留しないのには訳がある…!!
ということで、あえて保留してみました。
保留してみると、並達5度になってしまうことが分かります。
並達5度になっていると、その箇所(ソとレ)がすこーし目立っているような印象を受けますね。
第3音(シ)の音が埋もれており、すこーしチープな響きに聞こえます。
聴き心地が悪いとは思いませんが、良い響きとはいえませんよね!
並達5度:2声部が並行し、後続和音だけが完全5度を形成すること。
あえて保留(パターン②)
ちなみに、Ⅱのⅱが内声に含まれる場合はこうなります。
今度は並達8度になってしまいました…!!
ほんと僅かなことだと思いますが、Ⅱ→Ⅴの流れで聞くと、並達8度の箇所(ソとソ)の響きが重く感じませんか?
先述の並達5度もそうでしたが、完全1・8・5度の音程は協和しやすく、気を付けないとその音程が悪目立ちすることが分かります。
並達8度:2声部が並行し、後続和音だけが完全8度を形成すること。
あえて保留(パターン③ ラスト)
最後に検証するのは、並達〇度を形成させないパターンです。
聴いてみていかがでした?
並達〇度が形成されていない分、先ほどまでのものと比べると音の響きは悪くないと感じませんか?
そう感じた方は、もう一度よーく聴いてみてください。
今度はⅱ(レ)の音に集中して。
いかがでしょう。
バス・テノールにⅱ(レ)の音が密集していて、響きが重いと感じませんか?
僅かなことだとは思いますが。
セオリーの連結(始めに掲載したもの)と比べてみると、やはりセオリー従った連結の方がきれいに響いているように思えます。
結論
Ⅱ→Ⅴの連結においては、両和音の間に共通音ⅱがふくまれるが、これを保留せずにもっとも近い音(ⅶ)に下行させ、かつ、両和音の配分を一致させる。
第3章 基本位置3和音の連結 P34より
< 理屈 >
・共通音ⅱを保留させると、並達5・8度を形成させてしまう。
・ⅱをⅶへ下行させたほうが連結した和音全体がきれいに響く。
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