『Talking To the Moon』 楽曲分析・解説



Bruno Marsの『Talking To the Moon』の楽曲分析・解説ページです。

楽曲の構成や聴きどころ、歌のパフォーマンスを中心に解説していきます!


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楽曲概要



2020年10月5日リリースの1stアルバム『Doo-Wops & Hooligans』収録曲。
シングルカットはなし。

作曲 : Bruno Mars, Albert Winkler, Ari Levine, Jeff Bhasker, Philip Lawrence

ピアノの旋律とブルーノの歌声が非常に甘く、切ないバラード曲です。



楽曲分析

原曲Key=E(Eメジャー)

原曲BPM=65くらい

コード進行
 イントロ E(Ⅰ)

 Aメロ E→G♯m→C♯m→B→A(Ⅰ→Ⅲ→Ⅵ→Ⅴ→Ⅳ)

 Bメロ F♯m→B(Ⅱ→Ⅴ)

 サビ A→B→C♯m(Ⅳ→Ⅴ→Ⅵ)



コード進行についてですが、この楽曲は全体的に「解決しないコード感」が漂っています。“不安定”なコードから“安定”したコードへ移ることをコードの「解決」と呼びますが、この楽曲においてはその「解決」を本来あるべきところから外したり、「解決」感を緩めたりしています。そうすることで、音が“安定”した場所へ着地しない心もとなさが、切なさや悲しさを演出します。

では、それぞれの箇所のコード進行を順番にみていきましょう。

まずは、Aメロです。

”安定と“不安定”を繰り返した進行になっています。C♯mとBは一小節内・2拍ずつで切り替わっています。


G♯m(Ⅲ)は、使い方によっては“安定”さを演出することもできるのですが、ここではC♯m(Ⅵ)へ解決したかのような印象を受けます。


また、B(Ⅴ)のコードですが、これはドミナントコードといって基本的な機能としては“安定”したコード、つまりE(Ⅰ)かC♯m(Ⅵ)に移ることで解決感を出しますが、ここではE(Ⅰ)の前にA(Ⅳ)が挟まれています。

A(Ⅳ)もまたサブドミナントコードといって、E(Ⅰ)へ移ることで解決感をもたらすのですが、B(Ⅴ)に比べるとやや弱いです。

つまり、B(Ⅴ)が鳴ると強い解決感を期待して、次はE(Ⅰ)がくると予想したところにA(Ⅳ)がくるので解決感が遅れます。そして、A(Ⅳ)からE(Ⅰ)への解決感はやや弱くなります





続いて、Bメロです。

BメロはF♯m(Ⅱ)とB(Ⅴ)の2つのコードが交互に並んでいます。
どちらも不安定な音のコードです。

一般的にツー・ファイブといって、Ⅱ→Ⅴのコード進行はよく使われます。実のところ、Ⅱ→Ⅴ→Ⅰまでがセットになることで気持ちの良い進行になるのですが、ここではE(Ⅰ)は使われていません。

ですから、Bメロでは不安定な音はどこへも解決しないまま流れていくのです。このやりきれない感じが個人的にとても好みです。

次にサビへと移るのですが、サビはBメロの最後のコードB(Ⅴ)を受けてE(Ⅰ)かC♯m(Ⅵ)で始まるかと思いきやそうではありません。ここでも「解決しないコード感」があります。




そして、サビです。

サビはポップスの王道進行です。
一般的にはⅠ→Ⅱ→Ⅲのかたちで使われることが多いと思いますが、この楽曲ではⅣ→Ⅴ→Ⅵのかたちで使われています。

不安定さが徐々に高まり、不安定から安定に落ち着く感じが気持ちいいですね。また、ベースが一音ずつ階段状に上がっているのが高揚感を引き立たせてくれます。


ちなみに、より解決感をだしたければ、C♯mの代わりにEをもってくるのがいいのですが、これだとかえって落ち着きすぎな印象を受けます。

C♯m(Ⅵ)は安定さをもつコードですが、E(Ⅰ)に比べるとその安定さはやや控えめです。例えるなら、雨が降ってまだ地面が乾ききっていない様子のところ、ぬかるんだ地面に着地するか水をはじくアスファルトの上に着地するかの違いくらいあります。

この楽曲ではしっかりとした解決感よりもまだ少しぬかるみを残した感じを出した方がより感動的だと思います。





メロディーについても触れておきましょう。

メロディーは、ブルーノの作曲のクセを感じました。
・弱拍(2・4拍目や裏拍)から始まるフレーズ
・フレーズの多くは小節をまたぐ
・Aメロは基本的に音は順次進行(隣合った音へ進む)
・サビはアーフタクトのメロディーから、歌主導で始まる
・音が階段状に上がり最高音に到達する
等々

何もブルーノ特有のクセという訳ではありません。むしろ一般的にもよくみられるクセと分類してもいいと思います。悪くいえば、よくある曲の作り方です。

しかし、それでも『Talking To the Moon』が名曲たる理由は、サビのキャッチーさだと思います。誰もが聴いたら覚えてしまうメロディーラインの美しさだと思います。

評論家の中では「ブルーノの曲は安っぽいけど、安っぽくない」という意見もあるようですが、確かにその絶妙なラインを攻めているような気がします。

さらにブルーノの感傷的な声がそのメロディーを奏でることによってより感動的な楽曲に仕上がっています。



聴きどころ

解決しない、解決しきれない音の響きに浸りながら、ブルーノの感傷的な歌声を聴くとより楽しめると思います!

安っぽいけど、安っぽくないメロディーライン。
甘いけど、甘すぎない歌声。
その絶妙さが聴きどころです。

サビの最高音へ向かっていく高揚感は素晴らしく、あのノイジーで叫ぶかのようなC♯5(高いド♯)は心に響きます。

楽器構成は多くなく音数もシンプルなので、より歌声と歌詞の素晴らしさに気付ける楽曲です!





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